空き家とひと口に言っても、売りに出している中古物件、住民が退去したばかりの賃貸住宅、別荘や老後の生活用として活用予定の住宅、相続したばかりなどで処遇が決まっていない住宅など、その実態はさまざまです。
しかし2015年に施行された空き家対策特別措置法では、空き家の定義が定められ4つの種類に分類されました。
さらにその中で問題になる空き家に対して改善を促し、今後も増加することが懸念される空き家問題の解決を目指しています。
では空き家はどのような定義で分類され、問題となる空き家はどれほど増加しているのでしょうか?
種類別の増加傾向と対策をまとめました。さっそく見ていきましょう。
空き家対策特別措置法(空き家法)で定められた空き家の種類は以下の4通りです。
ではそれぞれの空き家がどのような定義で定められているのかを解説します。
賃貸用の住宅は、入居者を募集しているマンションやアパート、一戸建ての賃貸物件の空き家です。
築年数の古いものもあれば新築物件で入居者が決まっていないものも空き家です。
2019年に発表された2018年時点の数値では、借り手のついていない空き家が432万7千戸と空き家全体の50.9%を占めて1位の数値となっています。
売却用の住宅は中古物件や新築物件などで販売中の空き家です。
売却中の空き家は売りに出してはいるものの、すぐに買い手がつき売却できるとは限りません。
日本では家を買う場合、中古住宅よりも新築で購入するという高度成長期以降の文化が根強いため、中古住宅になかなか買い手がつきにくいという現状があります。
それでも賃貸用にくらべると数は少なく29 万3千戸で、空き家全体の3.5%です。
二次的住宅は別荘のように季節限定で住んだり、または相続したばかりで将来的に住む予定で管理していたりする利用予定のある住居です。
リゾートマンションやセカンドハウスなどもこの種類に該当します。
二次的住宅の数値も売却用同様に比較的少なく、38万1千戸で空き家全体の4.5%でした。
最後はその他の住宅ですが、上記の3種類以外の空き家すべてがこの種類に該当します。
とはいえ、その他という表現がかなり大まかなのでいくつか例を出すと、
など、用途が決まっていない空き家のことです。
この「その他の住宅」が空き家問題として取り上げられている問題の空き家になります。
所有者がはっきりとしていて管理もきちんとされていればとくに問題はないのですが、その中の一部の空き家は管理されず荒れ放題のまま荒廃していたり、所有者が不明のまま放置されたりした結果、さまざまなデメリットの要因となるのです。
空き家数は348 万7千戸で空き家全体の41.1%を占めます。なんと賃貸用につぐ2位!空き家問題が叫ばれる理由もわかる気がしますね。
次の項目では前回調査が実施された2013年とくらべて、どの空き家の種類がどの程度増減したのかみていきましょう。
上記の数値と空き家全体の数値に対しての割合、そして2013年との比較を一覧にまとめたものが下記です。
空き家種類 | 空家数 | 空き家全体に占める割合 | 2013年との比較 |
---|---|---|---|
賃貸用の住宅 | 432万7千戸 | 50.9% | 3万5千戸(0.8%)増 |
売却用の住宅 | 29万3千戸 | 3.5% | 1万5千戸(4.9%)減 |
二次的住宅 | 38万1千戸 | 4.5% | 3万1千戸(7.5%)減 |
その他の住宅 | 348万7千戸 | 41.1% | 30万4千戸(9.5%)増 |
空き家総数 | 848万9千戸 | 100.0% | 29万3千戸(3.6%)増 |
空き家の総数で比較した場合、2013年とくらべると約30万戸。全体の割合にすればわずか3.6%の増加におさまったということになります。
しかし注目すべきは用途が決まっていない「その他の住宅」です。
賃貸用、売却用、二次的用が1%以下の増加、もしくは減少している一方で「その他の住宅」は9.5%の増加と、大幅に増えていることがわかりますね。空き家問題は今後も早急な対策が求められています。
出典:平成30年住宅・土地統計調査 調査の結果http://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2018/pdf/kihon_gaiyou.pdf
すべての住宅の数から空き家の総数の割合を示したものが「空き家率」と呼ばれ、13.6%で過去最高となったことが数多く取り上げられています。
空き家率のみで見ると2013年からはわずか0.1%のみの上昇となり、一見すると「改善しているのでは?」と思えますね。
しかし種類別で見ていくと問題となる「その他の空き家」は増加していることは先ほど述べた通りです。
今後は2015年5月に完全施工された、「空き家対策特別措置法(空き家法)」によって問題のある空き家がどのような動きを見せるのかにも注目ですね。
2015年5月に施行された「空き家対策特別措置法(空き家法)」によって、問題のある空き家に対して行政が立ち入り調査をおこなう権限を得ました。
これまでは自治体の条例しかありませんでしたので、法的な権限が弱く立ち入り調査や所有者の特定などができない面があり、なかなか解決へ歩を進めることができなかったのが事実です。
空き家問題はこの法律によって注目を浴び、所有者としても早めに対策をしなければいけないという認識が広まりつつあります。では空き家法ができたことによってどのような変化があるのでしょうか?以下でみていきましょう。
空き家法では、問題のある空き家に対して立ち入り調査を実施できます。まずこれが大きな変更点で、空き家の所有者の実態を調査し、所有者不明の空き家の数など正確な実態を知ることができるようになりました。
そして問題のある空き家の中でもとくに危険度の高い空き家を「特定空き家」と指定し、問題解決に向けた具体的な助言や指導をおこなうことができるようになったのです。
所有者としては特定空き家に指定され改善しないままでいると、以下のデメリットが生まれます。
このようなデメリットが勧告、命令、行政代執行といった3つの段階で生まれ、経済的負担が増えることになります。
では特定空き家にしないためにはどのような対策があるのでしょうか。
具体的にみていきましょう。
特定空き家になる条件は、適切な管理がされておらず倒壊や周囲への危険性があると判断された場合です。
したがって「まだ用途が決まっていない。」、「今後も維持をしていくつもりだ」といった場合はもちろん、売却や処分などの処遇が決まっている場合にも、まずは管理が重要となります。
売却を検討するならなるべく早めの売却を目指しましょう。
なぜなら、家の資産価値は年数の経過とともにどんどん減少していくから。相続で持つことになった空き家であればなおさら建築年数も経っているはずですし、空き家は管理をしなければ劣化も早まります。時間がかかるほど管理にかかる費用や、税金を支払うことになりますので早い対応が必要です。
空き家を賃貸に出したり、カフェやオープンスペースにしたりして収益化すれば、維持費を相殺しながら持ち続けることができます。
収益から修繕費なども捻出できれば建物自体の劣化を遅らせることも可能です。
倒壊の危険性が高い場合には、思い切って処分することもひとつの手段です。
更地にすれば固定資産税はあがりますが、倒壊などで近隣に損害を与え損害賠償請求されるリスクはなくなります。
ここまで空き家の種類とその増加率についてまとめてきました。
2013年からの増加率は全体でみるとわずか0.1%の増加ですが、空き家のみでは約30万戸が増加している現実がわかりました。
次回の調査は2023年に実施されます。空き家法がどのような影響をみせるのか期待するのとともに、所有者ひとりひとりの早めの対策が問題解決の鍵となりそうです。
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