2015年に施行された空き家法(空き家対策特別措置法)により、行政による空き家の実態調査がおこなわれるようになりました。
調査の結果、特定空き家として指定されると、行政指導の対象になったり納める税金が増えたりと所有者にとって負担となるデメリットが多く、近隣の住民から損害賠償を受ける可能性も。
ではどのような空き家が特定空き家と指定されるのでしょうか?この記事では、特定空き家に指定される条件から対策にいたるまでをまとめました。
特定空き家となる空き家は「管理されず放置されたボロボロで汚い空き家」です。ゴミにあふれ草木が生い茂り、屋根や壁が崩れているような空き家を想像していただけましたか?
そのような状態の空き家が特定空き家となるわけですが、指定されるには法律上の条件がいくつかあります。では特定空き家と指定される空き家の条件にはどのようなものがあるのでしょうか?詳しくみていきましょう。
空き家法を確認すると、特定空き家の条件は4つあることがわかります。
その条件は、
※出典:国土交通省「「特定空家等に対する措置」に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)」(https://www.mlit.go.jp/common/001090531.pdf)
というものですが、法律だけあって表現が難しい部分もあります。わかりやすくまとめると、
といった内容です。
それぞれの項目について以下で詳しくみていきましょう。
建物の主要な構造部分となる、屋根、梁、柱、壁などに大きな損傷があったり、家が傾いていたりするなど今にも倒れそうな状態です。
また屋根や壁が剥がれ風などで飛散して周囲の住宅に損害を与える可能性があるものが該当します。
建物が壊れ、アスベストなどの石綿が飛散し周囲の健康を害するような場合や、ゴミの不法投棄によって害虫や害獣が発生し住みつく、異臭がするなど衛生上よくないとされる状態です。
建物の壁に落書きや割れたままの窓ガラス、放置されたゴミや、建物を隠すほど生い茂った植物など、建物の景観が悪い状態でさらなる悪化を招くような状況になっていることです。
<h4> 4.周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態</h4>
庭木が道路に突出していて通行の妨げや、住みついた動物や虫などの鳴き声、異臭、大量発生などの原因になるような状態。また不法侵入や放火など、近隣の生活を脅かすリスクが高い状態です。
特定空き家として指定されると、
といったデメリットがあります。
ただし特定空き家として指定されたらすぐに措置がとられるわけではなく、指示や命令をしても改善がされない場合に段階的に実行されます。
では措置が取られるまでにはどのような段階があるのでしょうか?チェックしていきましょう。
問題のある空き家とみられる場合には、行政の立ち入り調査がおこなわれ、調査の結果によって特定空き家であるかの判断がされます。
特定空き家として指定された後、以下4段階の措置が取られます。
まず特定空き家として指定された場合には、改善するよう助言や指導がされます。
この段階では助言や指導のみ留まり、罰則などは科せられません。
しかし次の勧告の段階から罰則が科せられていくことになりますので、助言・指導の段階で早急に改善することが重要です。どの段階でどのようなデメリットが発生するのか以下で解説していきます。
固定資産税では建物のある土地に対して、軽減措置が取られています。
通常は空き家を更地にすると、この軽減措置の適用から外れ基準の税金を納めなくてはいけません。つまり空き家法ができるまでは、土地に建物が建ってさえいればどんなにボロボロな空き家であっても税制上優遇されていたのです。
しかし空き家法成立後は特定空き家として指定され、行政から勧告を受けた段階で軽減措置がなくなります。したがって最大6倍の固定資産税を支払うことになるのです。
勧告を受けたにもかかわらず改善されなければ、次の段階となる「命令」が言い渡されます。
これは行政処分にあたり、命令に従わず改善しない場合は50万円以下の罰金を払わなければいけません。
固定資産税の軽減が外れそのうえ罰金となるわけですから、所有者にとってはかなりのデメリットですよね。
命令をしてもなお改善されない場合は、行政代執行という最終手段が実行されます。
行政代執行とは読んで字のごとく、「行政が代わりに執行する」というものですが、何を執行するのかというと、
といったものを所有者の代わりに行政が実施します。「行政が代わりにやってくれるならラッキー」と思うかもしれませんが、執行に掛かる費用までは代わってくれません。
厳密に言うと委託した業者への支払いは行政が支払いますが、その後所有者に金額請求をおこないます。行政からの請求となりますので、費用が払わなければ税金の取り立てと同様に、給与や財産の差し押さえも可能です。
また行政が代わりに業者を選び解体や修繕などをするため、安価な業者に依頼するなどの配慮はしてくれません。したがって一般的な相場よりも高額になることも覚悟しておきましょう。
特定空き家として指定された場合にはすぐに改善するほかありません。指摘の箇所の修繕や、解体に早急に取り掛かりましょう。
経済的状況から解体や修繕が難しい場合には、助成金の活用ができないかなど自治体に相談してみるといいでしょう。
建物の状況にもよるため一概にはいえませんが、行政指導が言い渡されてから約1年に渡り、勧告や命令をおこない、行政代執行となるケースが多いようです。
行政代執行までは1年程度だとしても、勧告の時点で固定資産税の軽減がなくなることを考えると、そんなに長い猶予期間はないといえます。
特定空き家に指定されても期間内に改善が実施されれば、指定は解除されます。
特定空き家に指定されると、固定資産税の増税、罰則金、強制撤去などのデメリットが発生します。
また空き家がボロボロの状態であれば、物体の飛散などで近隣住民に危害を加え損害賠償を請求されることも。
現状は特定空き家として指定されていなくても、管理がされず放置された空き家は劣化が早まります。トラブルにならないためにも、徹底した管理と早急な対応が必要です。
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